信用調査大手の帝国データバンク、および東京商工リサーチによると、群馬県高崎市箕郷町の「多胡運輸株式会社」(代表取締役:多胡茂美、仮代表:上野猛)は8月4日、前橋地方裁判所高崎支部から破産手続きの開始決定を受けた。事件番号は平成28年(フ)第162号で、財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日は平成28年11月9日午前11時、破産管財人には都木幹仁弁護士(ぐんま法律事務所、群馬県高崎市昭和町224-1、電話:027-326-6001)が選任されている。負債総額は事故の被害会社など4社に対して約33億円となっている。
同社は1975年(昭和50年)に創業し、92年(平成4年)11月に法人改組した一般・特定貨物自動車運送業者。群馬県内で一般貨物運送業を営むほか、燃料輸送大手「ホクブトランスポート株式会社」の協力会社として出光興産の油槽所と系列ガソリンスタンド間の石油燃料の輸送などを手掛け、2008年8月期には年収入高約3億6000万円を計上していた。
しかし2008年8月、首都高速道路5号池袋線熊野町ジャンクション付近でガソリンおよび軽油を積載していた同社所有のタンクローリーがカーブを曲がり切れずに横転し、5時間半に渡って炎上。これにより、橋桁や近隣のマンションの外壁などが熱で熔解して大きく損傷し、高速道路高架部分の架け替え工事やマンションの外壁被害の修繕工事などで多額の損害賠償補償の問題を抱えることとなった。その際、加入していた関東交通共済協同組合からの限度額となる賠償金10億円に加えて、資産の整理売却などによる賠償を企図したものの、損害額が首都高速分だけで約45億円と多額であったため補いきれず、道路を管理する首都高速道路株式会社などから荷主・元請業者とともに損害賠償請求を起こされていた。
この事故に伴い、同社に対しては本社営業所の車両使用停止や運行管理者資格者証の返納命令などの行政処分が行われていたが、社会ニーズの強い燃料輸送業務を行なっていたことから以後も事業を継続。2011年度に経理事務などを担当していた系列会社「株式会社美正」に運送事業を移管し、本社不動産などについても美正に売却。2012年度には事業を停止していた。
その後、2015年頃に代表で会った多胡茂美氏が逝去したため、運営に関して利害関係人からの裁判所に対する申立により、2016年2月に弁護士である上野猛氏が仮代表に就任。その後、2016年7月に同社と運転手に対し32億8900万円の支払い判決があったため、今回の措置となったという。なお、同判決においては荷主である出光興産と元請であるホクブトランスポートについては荷主・発注元に過ぎず、使用者責任は負えないとして無罪となっている。
■関連リンク
株式会社美正
http://www.gunma-bisyo.com/
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