信用調査大手の帝国データバンクによると、アーツ証券の関連会社で英領西インド諸島のケイマン諸島に本拠を置き、東京都千代田区丸の内を国内所在地として登録している特定目的会社「WADATSUMI BENEFIT LIMITED」(代表取締役:齋藤文範)は6月29日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日は平成28年12月7日午前10時、破産債権の届出期間は8月3日までとなっている。また、破産管財人には岩知道真吾弁護士(尾崎法律事務所、東京都中央区日本橋室町1-12-15、電話:03-6214-3222)が選任されている。負債額は現在調査中とのこと。
同社はアーツ証券株式会社と東京都千代田区の企業間決済支援業「ワダツミ株式会社」の業務提携により2013年(平成25年)2月に共同で設立された特定目的会社。中小企業の売掛債権を買い取り、それを「裏付資産」として「中小企業資金繰支援債券」との名称の社債を発行し、資金調達を行っていた。これは中小企業側にとって売掛債権の現金化を早め、資金効率を高めることが可能となるもので、従来の不動産などを担保とした銀行融資に依存する資金調達とは異なる、直接金融型の資金調達の選択肢として有望であるとされていた。
しかし、実際には債券の発行が始まった当初から、買い取った売掛債権の残高が社債発行残高に比べて僅少な状態が継続する事態となっており、2014年9月以降は買い取った売掛債権について回収遅延が発生するなどしていた。
こうしたなか、アーツ証券の実質的な親会社であり、医療機関が受け取る診療報酬を証券化したいわゆる「レセプト債」を発行していた株式会社オプティファクター(東京都品川区、2015年11月13日に破産開始決定)とそのグループ会社7社が次々に経営破綻。その後、アーツ証券も2016年1月29日付で証券取引等監視委員会からの処分勧告により関東財務局から公表された行政処分の内容を受け、2月1日に東京地裁へ自己破産を申請。3月31日に破産手続き開始決定を受けていたが、その破産手続きの一環としてアーツ証券から第三者破産を申したてられたため、今回の事態となったという。
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