官報(6772号)によると、東京都港区西新橋の「株式会社海外移住旅行社」(代表取締役:保崎利根雄)は4月26日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。事件番号は平成28年(フ)第2751号で、財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日は平成28年7月27日午前10時、破産債権の届出期間は5月31日までとなっている。また、破産管財人には星千絵弁護士(田辺総合法律事務所、東京都千代田区丸の内3-4-2、電話:03-3214-3811)が選任されている。
同社は1885年(明治18年)に設立された海外興業株式会社を前身とし、1958年(昭和33年)10月に「株式会社南米移住旅行社」として設立された第1種旅行業者。前身の海外興業はブラジルをはじめとする南米地域への海外移住を取り扱う旅行業者で、移住協定の発足に伴って政府の組織団体が設立されたことにより閉鎖されたが、海外興業の事業を承継する形で同社が設立されていた。ブラジルやベネズエラの大使館査証窓口業務のほか、中南米諸国の査証取得代行や日本企業の南米(主にブラジル)進出手続きなどを事業としていたが、1996年に第1種旅行業を取得すると、「KIRツアー」の屋号で、サッカー留学や南米への語学研修、またイグアスの滝などを訪問する旅行の企画・代理事業を展開。*1ピーク時の平成17年9月期には約41億2000万円の売上高を計上していた。
しかし、ブラジル人向けに行った航空券予約サイトのシステム投資や平成24年9月に開設したサンパウロ支店など、設備投資負担が増加した一方、国内では東日本大震災発生の影響により旅行客の減少や、国内企業の雇用減少などにより、厳しい経営状況に陥っていた。2014年に開催されたワールドカップでは顧客数はやや増加したものの、円安により業績が想定を下回り、2014年9月期の売上高は16億1153万円にまで減少していた。その後、同社は廃業を模索し、2015年10月に事業を停止。自己破産を申請し、今回の事態になったという。
なお、信用調査大手の東京商工リサーチによると、事業停止に伴う旅行客への被害はなく、同社の名古屋支店は「株式会社アースデザイン」を設立して「KIRツアー」のブランドを承継し、名古屋地区の顧客を対象に営業を継続しているという。
*1:東京第1種の海外移住旅行社が破産、ブラジル旅行老舗(トラベルビジョン、2016年5月15日)
■関連リンク
アースデザインKIRツアー
http://www.earth-d.co.jp/
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