官報(6766号)によると、金融庁は公認会計士・監査審査会から行政処分その他の措置を講じるよう勧告がなされていた東京都中央区日本橋本石町の「明誠有限責任監査法人」(統括代表社員:西谷富士夫)に対し、公認会計士法昭和23年法律第103号第34条の21第2項第3号の規定に基づき、業務改善命令(業務管理体制の改善)を出したことが分かった。
金融庁のプレスリリースによると、金融庁の公認会計士・監査審査会が同監査法人に検査を行ったところ、検査基準日において、公認会計士法が規定する業務管理体制の社員要件を満たしていなかったほか、監査を実施するための人的資源を十分に確保していないなど、監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築できていなかったという。また、品質管理責任者である統括代表社員は、監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築せず、各社員は、同監査法人が監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢がないことを認識していなかった。また、業務執行社員は、入手した監査証拠の十分性及び適切性の観点を踏まえた深度ある査閲を実施しておらず、且つ、監査補助者に対して、監督及び指導を十分に行っていないなど、監査業務における品質管理において広範に不備が認められたとしている。
また、同審査会による前回の検査における指摘事項について、同監査法人は、指摘事項の改善策を周知し、定期的な検証を通じて改善状況を確認しているものの、定期的な検証の対象とならなかった業務については、改善状況の検証を実施していない。また、日本公認会計士協会の品質管理レビュー等での指摘事項についても、同様に定期的な検証の対象とならなかった業務については改善状況の検証を実施していないなど、業務改善に向けた取り組み状況が著しく不十分だったという。なお、業務改善命令の内容については以下のようになっている。
■業務改善命令の内容
(1)監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築すること(監査を実施するための人的資源の十分な確保、入手した監査証拠の深度ある査閲、監査調書の査閲を通じた監査補助者への十分な監督及び指導の実施など審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
(2)監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(監査リスクの高い被監査会社の監査を実施するための監査チームの適切な組成、継続企業の前提に関する注記について、重要な不確実性の有無を判断するための検討、関連当事者から取得した株式の取引価格やのれんの償却期間の妥当性についての検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
(3)被監査会社のリスクを踏まえて実効性のある審査を実施し、監査実施上の重要な問題点を指摘できる体制を整備すること。
(4)審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビュー等において不備を指摘された事項について、網羅的に改善策を講ずるとともに、その改善状況を組織的に検証し、当該改善策が浸透・定着する態勢を整備すること。
(5)上記(1)から(4)に関する業務の改善計画について、平成28年5月末日までに提出し、直ちに実行すること。
(6)上記(5)の報告後、当該計画の実施完了までの間、平成28年10月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。
■関連リンク
監査法人の処分について(金融庁、平成28年4月15日)
http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20160415-1.html
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