官報(6703号)によると、福島県本宮市の放射能除染などの環境メンテナンス事業「株式会社バイノス」は19日、福島地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。事件番号は平成28年(フ)第2号で、財産状況報告集会・一般調査・廃止意見集会・一般調査・廃止意見の期日は平成28年4月25日午後2時、破産管財人には渡邊真也弁護士(渡邊真也法律事務所、福島県郡山市麓山1-7-16、電話:024-921-0131)が選任されている。
同社は2005年(平成17年)3月に筑波大学発のベンチャー企業「株式会社日本バイオマス研究所」として設立。当初は新種の微細藻類「バイノス」を用いた廃液・排水の処理剤「バイノスP」の製造販売及び廃液・排水処理のソリューションサービスを事業としていたが、2011年3月に発生した東日本大震災以後は、放射性物質対策への応用を目指して、北里研究所、山梨大学医学部の志村浩己特任准教授(当時、現在は福島県立医科大学臨床検査医学講座教授)らと共同研究を行った*1ほか、ゼネコン大手の大林組などと共同でアスファルト舗装道路の除染技術「バイノスRD工法」を開発する*2など、「バイノス」を用いた放射能除染事業に主軸を移していった。この間、2012年4月に現社名に社名を変更している。
その後、2013年2月に「生活救急車」を展開する「ジャパンベストレスキューシステム株式会社(以下、JBR社)」が同社を買収。同じくJBR社傘下の自動車リース業「JBR Leasing 株式会社」(平成27年10月1日にJBR社が吸収)と車輌賃貸契約を締結し、福島県内において除染事業を行っていた。しかし、元々、研究開発が主体であったことから赤字体質となっていた上、多くの作業員と作業時間を必要とする宅地除染が当初想定されていた以上に収支を圧迫していたため、平成24年12月期から3期連続で赤字を計上していた。
さらに平成26年3月、同社の会計監査を請け負っていた有限責任監査法人トーマツの元に「JBR Leasingとの間の車両賃貸契約に係る賃貸料が法外なことが、バイノスの赤字の原因」とする内部告発状が届いたことを切欠として、同社による不適正会計が発覚*3*4。JBR社の株価が急落する原因ともなったため、2015年(平成27年)8月に企業価値向上のためとして、JBR社が当時の代表取締役に保有株を960円(960株、1株1円、議決権ベースで62.41%相当)で売却していた*5。
(2016年1月30日追記)
信用調査大手の東京商工リサーチによると、負債総額は15億3243万円(平成27年9月期決算時点)となっている模様。
*1:東日本大震災:新種の藻類「バイノス」、福島の除染で活用へ 放射性物質に高い吸着力 /山梨(毎日.jp,、Wayback Machineによるアーカイブ)
*2:アスファルト舗装道路の除染技術「バイノスRD工法」を開発(株式会社大林組 プレスリリース)
*3:〔会計不正調査報告書を読む〕【第22回】ジャパンベストレスキューシステム株式会社・「第1次第三者委員会調査報告書(平成26年6月2日付)」(Profession Journal)
*4:内部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(著:ジャパンベストレスキューシステム株式会社 内部調査委員会)
*5:JBR、連結子会社のバイノスを譲渡 企業価値向上のため(M&Aタイムス)
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